こんにちは、SOUSEIです!
奈良県香芝市の中心的な鉄道駅である「近鉄大阪線・五位堂駅」で、長年の懸案事項であった”
これまで駅北側には広場が整備され、バスやタクシーなどの公共交通をつなぐ結節点として大きな役割を果たしてきました。
しかし駅の南側には十分な広場がなく、送迎車両による路上駐車や交通渋滞が慢性化し、住民の利便性や安全性の面で大きな課題を抱えていました。
香芝市が令和6年12月に公表した「近鉄大阪線五位堂駅南側駅前広場整備基本構想」は、こうした問題を解決し、駅周辺を「にぎわいの拠点」として再生させるための青写真といえます。
本記事では、この構想の背景や課題、具体的な整備内容、そして今後のスケジュールや地域にもたらす効果について詳しく解説します。
目次
1. 北側は整備済み、南側は未整備というアンバランス
五位堂駅は奈良県内でも利用者が多い駅のひとつです。
平成25年から令和元年までは一日あたり約26,000人が乗降し、新型コロナの影響で一時は約20,000人に落ち込みましたが、その後は回復基調にあります。
奈良県内の近鉄大阪線の駅では、大和八木駅に次ぐ利用規模を誇ります。
平成10年には駅北側に広場が整備され、鉄道とバス、タクシーなどをつなぐ交通結節点として機能してきました。
しかし利用者の増加や周辺開発の進展に伴い、北側広場も慢性的な混雑に悩まされています。
特に朝夕のラッシュ時には送迎車両やバスの発着が重なり、広場内が入り組んだ状況になることも少なくありません。
一方、駅の南側は広場そのものが整備されておらず、送迎車は駅前の狭い道路に停車せざるを得ない状況です。
その結果、南側の道路や踏切では渋滞や危険な交通状況が頻発しています。南
側住民の中には、わざわざ踏切を渡って北側広場を利用する人もおり、それがまた北側の混雑を悪化させるという悪循環が続いてきました。
2. 交通と安全、二つの大きな課題
南側広場未整備による問題は単なる不便さにとどまりません。
もっとも深刻なのは交通の混雑と安全性の低下です。
五位堂駅南側の道路は、駅を利用する送迎車だけでなく、地域の通過交通や住宅地の生活道路としての役割も担っています。
そのため車の往来が多く、路上駐車が加わることで常に混雑が生じています。
また、南側にはバス路線がなく、地域住民が鉄道を利用する際には自家用車に依存せざるを得ないという現実があります。
公共交通の利便性が北側と比べて大きく劣っている点も課題です。
さらに深刻なのが交通安全です。
南側は歩行者と自動車の動線が分離されていないため、特に通学時間帯には危険な状況が目立ちます。
駅周辺は香芝市立五位堂小学校や香芝東中学校の通学路に指定されており、多くの児童・生徒が通学で利用しています。
子どもたちの安全を確保するという観点からも、南側広場の整備は急務とされています。
3. 南側広場の整備方針と特徴
今回の計画では、南側に約3,700平方メートルの広場を整備することが示されています。
すでに「五位堂駅前南線」の一部として都市計画決定されている範囲であり、将来的に交通需要が増加することを見据えて拡大も検討されています。
整備にあたって新たに街づくりのコンセプトを掲げることはせず、既存の都市計画マスタープランに沿った形で進められる点も特徴です。
香芝市はすでに五位堂駅周辺を「にぎわい拠点」と位置づけており、南側広場もその一部として位置づけられます。
景観については北側との統一感を図りつつ、圧迫感を与えない開放的な空間づくりを目指します。
将来的には景観条例や重点景観形成区域の指定などにより、周辺建築物の高さやデザインをコントロールする方針も示されています。
4. 交通機能の充実
南側広場に求められるのはまず交通結節点としての役割です。
広場内には短時間駐車に対応できる自家用車用の駐車区画が整備され、家族による送迎がスムーズになります。
また北側で顕著に見られる「キス・アンド・ライド」(家族が車で駅まで送り、すぐに立ち去る形態)にも対応できる乗降場が設けられる予定です。
タクシー乗降場も南側に設置が検討されています。
北側広場の混雑緩和に加え、南側住民の利便性を高める狙いがあります。
路線バスは従来通り北側を拠点としますが、将来的にはコミュニティバスの発着も想定し、そのためのスペースも確保されます。
歩行者の安全確保も大きな柱です。
広場の歩道は「駅前広場計画指針」に基づき、最小でも幅員6メートル以上を確保する方針が示されています。
これにより、歩行者と車両の動線が分離され、交通安全の大幅な向上が期待されます。
また現在南側にある民間の駐輪場は、広場整備により用地取得の対象となるため、移設や代替施設の整備が課題となります。
自転車利用者が多い地域性を考慮すれば、この点も重要な検討事項といえるでしょう。
5. 交流と景観、地域の顔としての機能
南側広場は単なる交通拠点にとどまらず、地域住民が集い憩う場としての役割も期待されています。
ベンチや滞留スペースを導入し、待ち合わせや休憩の場として活用できるようにすることが計画されています。
また、香芝市の地域ブランド「Kashiba+」に認定された製品やデザインを活用したモニュメントを設置し、地域らしさを象徴するシンボル空間とする構想もあります。
緑化や植栽を取り入れた景観形成によって、南側広場は単なる駅前の空間ではなく、「地域の顔」としての機能を果たしていくでしょう。
さらに公共的なサービス施設として、公衆トイレや郵便ポスト、案内板や電話ボックスの設置も検討されています。
これらは駅利用者だけでなく、地域の住民にとっても便利な施設となります。
6. 周辺道路との一体的整備
広場の整備は周辺道路と切り離して考えることはできません。
特に問題となっているのが「下田第5号踏切南側交差点」です。
この交差点は五叉路のような複雑な形状をしており、車両と歩行者が入り乱れる状況が発生しています。
南側広場の整備に合わせ、この交差点の改良も実施される予定です。
また、南側広場に接続する市道10-36号線についても拡幅が検討されています。
より緩やかな交差角とすることで交通の円滑化を図り、地域全体の交通環境を改善する狙いがあります。
7. 計画のスケジュール
香芝市は令和7年3月の市議会定例会に整備基本計画の予算案を提出し、令和7年度から遅くとも令和8年度前半までには基本計画を策定する予定です。
その後、令和9年度に詳細設計を実施し、用地取得を進めながら工事に着手する流れが描かれています。
工事の具体的な時期は周辺交通の状況を考慮して決定されるため、完成時期はまだ明確には示されていません。
しかし少なくとも令和10年代前半には南側広場が姿を現す可能性が高いと見られます。
8. 完成イメージ

引用:https://www.city.kashiba.lg.jp/uploaded/life/53141_132958_misc.pdf
9. 官民連携と補助金の活用
事業を進めるにあたっては官民連携も重視されています。
周辺の商業施設や住宅開発と一体的に整備を行うことで、地域全体の活性化につなげる考えです。
国の補助制度である「社会資本整備総合交付金」の活用も検討されており、市の財政負担を抑えながら事業を推進する工夫がなされています。
また、鉄道事業者である近畿日本鉄道や奈良県公安委員会との協議も不可欠です。
土地利用や費用負担、交通安全対策などについて、関係機関と調整を重ねながら進められることになります。
10. 地域にもたらす未来像
五位堂駅南側駅前広場の整備は、香芝市にとって単なるインフラ整備ではありません。
それは「地域の暮らしをより快適に、安全にする」ための大きな転換点です。
南側住民にとっては送迎や公共交通の利便性が向上し、子どもたちの通学もより安全になります。
駅を利用する人にとっては、南北両側からアクセスしやすくなることで、移動の選択肢が広がります。
さらに交流機能を備えた広場は人々が集い、語らい、地域に活気をもたらす拠点となるでしょう。
香芝市が掲げる「にぎわいのまちづくり」というビジョンのもと、この南側広場はその象徴的存在となるはずです。
五位堂駅を中心に、香芝市がどのように成長していくのか、今後の動きに注目が集まります。