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住宅新トレンド「断熱新時代」とは!

2024年9月13日

こんにちは、SOUSEIです!

お家づくりを検討する際、断熱性能は重要な要素の一つです。

日本は四季がはっきりしており、冬の寒さや夏の暑さに対応するために、住宅の断熱性能が大きな役割を果たします。
断熱性能を高めることで、快適な住環境を実現するだけでなく、エネルギー効率が向上し、長期的に見ると経済的なメリットも大きくなります。

この記事では、断熱性能についての具体的な数値や経済的な違いも交えながら、断熱性能の重要性について詳しく解説します。









1. なぜ今、注目されている?「断熱性能」



1-1. 今と昔、「日本の気候」が大きく変化したこと


近年35度を超える「猛暑日」を超える日が多くなりましたが、100年前はほとんどありませんでした。
日本のかつての住宅づくりでは、猛暑日がほとんどなく多湿な気候だったため、夏の気候に標準を合わせて『風通しの良い家づくり』が基本だったことが、日本の住宅が「断熱性」において世界から見ても何歩も遅れている原因とされています。



引用:SUUMO「トレンド発表会2024」資料




1-2. 日本の既存住宅は9割が「低」断熱住宅


実は従来の住宅に対する考え方が現在にも今だ影響しています。
国交省の推計によると省エネ基準を満たす住宅は13%に留まると試算されており、「断熱等級3」以下の低断熱住宅が約9割をしめているのが実情です。
ほとんどの既存住宅が「夏は暑く、冬は寒い住宅性能」なのです。



引用:SUUMO「トレンド発表会2024」資料




1-3. 光熱費が過去最高水準に


近年の光熱費の値上がりは著しく、今年7月の電気代は関西電力のエリアで約2,400円も値上がりしたというデータがあります。
その後も光熱費の高騰は顕著で、新築を建てる際には「電気代が節約できる家」=『省エネな家』の関心が高まっていると言えます。

リクルート社による「2023年注文住宅動向・トレンド調査」によると、注文住宅における重視する条件で「断熱性・気密性」は耐震性に次ぐ2位となっており、中でも年々重視される方が増える傾向にあることが特徴です。
その他「省エネルギー性に優れていること」や「ZEHであること」を重視される方も増加傾向にあることから、より光熱費を削減できる「省エネ性」の注目度が増しているといえます。



引用:SUUMO「トレンド発表会2024」資料






2. 「断熱新時代」と言われるのはなぜ?



以前から少なからず注目されていた「断熱性能」ですが、なぜ今『断熱新時代』と言われるのか。
これから注目すべきメリットやそのポイントを4つご説明いたします。




2-1. 世界的に「健康寿命の延伸」がうたわれている


WHO(世界保健機関)は2018年に『健康被害を防ぐために、新冬季においても室内温度を18度に保つこと、夏季においては熱中症を防ぐことを目的とした断熱材の施工』を条件付きではありますが、世界的に勧告したことが大きな起因となっています。

ここでポイントなのは、「新築時」だけでなく「改築時」においても断熱性能を上げることをうたわれている、という点です。
健康被害を未然に防ぐための断熱改修という点が新たに注目すべき点なのです。




2-2. 断熱性能の高い住宅に住む選択肢の幅


以前は断熱性能は「新築戸建て住宅」で注目されてきましたが、先述では断熱改修工事について触れました。
既存の住宅や賃貸住宅においても断熱性能を高くすることが可能な今、様々な選択肢が増えていることが新たな注目点です。
例えば、「断熱性能が高く、寒冷地においても冷暖房費が安い賃貸物件」「既存戸建てにおいても断熱改修リノベを施す」、そして「大型マンションや団地においても管理組合が断熱改修工事を実施する」など、従来は難しいとされていた住宅においても断熱性能の高い住居が増えてきています。




2-3. 学校や公共施設の断熱性能も注目されはじめた


総務省の発表によると、年間の熱中症のうち4.7%は教育現場で起こっているといわれており、住宅だけでなく学校や公共の施設の断熱改修も近年注目されています。

また熱中症などの健康被害だけでなく、断熱改修をすることで温熱環境が改善され、集中力の欠如も減り、学習環境の改善にも効果があることも分かっています。
そのため学校断熱DIYのワークショップなど、生徒による改修やワークショップも広がりを見せています。




2-4. 売却時の資産評価の見直し


日本は従来より建物への評価が低く、建物への資産価値を高めるのを妨げていました。
例えばアメリカでは人口増に比例して住宅需要が増え、投資額と資産額が等しいとされています。
日本ではどうでしょうか?
実は日本は投資額に対し資産額が低く、国交省の報告では500兆円も乖離があるとされています。
それを見直すためにも、日本の住宅評価制度の改善が求められているのです。

先駆けて鳥取県では中古住宅の性能や品質を価値に反映する新評価法を今年の4月から運用を開始しており、新築時の性能や性能改修の投資に応じて建物の評価額を上げる仕組みをスタートさせています。






3. 改めて確認しておこう「Ua値」



Ua値(外皮平均熱貫流率)は、住宅全体の外皮(壁、屋根、床、窓、ドアなど)からどれだけの熱が出入りするかを示す指標で、数値が低いほど断熱性能が高いことを意味します。

例えば、日本の省エネ基準では、地域ごとに定められた住宅のUa値基準があります。
北海道などの寒冷地では、Ua値が0.4以下であることが求められており、関東以西の温暖地でも0.87が基準です。
この基準をクリアすることで、寒冷地でも暖かく、温暖地でも涼しい快適な住環境を実現できます。
その他にもU値という数値が存在します。

Ua値は、建物全体の断熱性能を示す指標であり、建物全体の断熱性を総合的に評価する際に用いられます。

U値は、個々の建物部位の断熱性能を示す指標であり、低いほど断熱性が高いです。
日本で「断熱性能の良い家」とされるU値は、0.5〜0.8が一般的な目安となります。
特にZEH基準を満たす住宅は、U値が0.5 W/m²K以下であり、非常に高い断熱性能を持っています。
これに対して、一般的な新築住宅のU値は1.5〜2.5程度が標準です。






4. Ua値が重要な理由



4-1. エネルギー効率の向上-光熱費の削減


高い断熱性能を持つ住宅は、エネルギー消費を大幅に削減できます。

たとえば、Ua値が0.5の住宅と比較して、Ua値が1.0の住宅では、年間の光熱費が約30%増加する可能性があります。
具体的には、Ua値が0.5Wの住宅では年間の光熱費が約14万円、Ua値が1.0の住宅では約20万円かかると試算されています。
10年間で約60万円の光熱費削減が期待できるのです。




4-2. 快適な住環境の実現-ヒートショック対策




Ua値が低い住宅では、室内温度が外気に影響されにくくなります。

たとえば、Ua値が0.5の住宅では、室温の変動が少なく、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住環境が保たれます。
具体的には、室内温度の変動が2℃以内に抑えられることが多く、エアコンや暖房の使用頻度が減り、電気代の節約にもつながります。




4-3. 結露の防止-健康リスクの軽減


Ua値が高い住宅では、冬場に窓ガラスや外壁に結露が発生しやすくなります。

たとえば、Ua値が2.0の住宅では、外気温0℃のときに室内が約18℃になると結露が発生する可能性があります。
対して、Ua値が0.5の住宅では、結露のリスクを大幅に軽減できます。
結露が防げることで、カビの発生を防ぎ、健康リスクを低減することができます。






5. Ua値と経済的な違い



5-1. 初期費用とUa値の関係


Ua値が低い家を建てる際には、一般的に初期費用が高くなる傾向があります。
断熱材や複層ガラス、樹脂サッシなどの高性能な材料を使用することで、建築費用が通常より10〜20%程度増加する可能性があります。

しかし、これらの初期投資は、長期的な光熱費の節約や快適な住環境の提供により、経済的なメリットをもたらします。




5-2. 補助金や税制優遇措置の活用


Ua値が低い住宅を建てる場合、国や自治体からの補助金や税制優遇措置を活用することができます。
たとえば、ZEH(ゼロエネルギーハウス)に認定される住宅には、100万円程度の補助金が支給されることがあります。

また、省エネ性能が一定基準を満たす住宅を建てた場合、住宅ローン減税や固定資産税の減額といった税制優遇を受けることが可能です。
こうした補助金や優遇措置を活用することで、初期費用の一部をカバーし、経済的な負担を軽減することができます。

さらに、ZEH認定住宅や省エネ住宅は、将来的な資産価値の維持にも寄与します。






6. 断熱性能を高めるための具体的な対策



6-1. 高性能な断熱材の選定


断熱材には、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォームなどがあります。
ウレタンフォームは、特に高い断熱性能を持つため、寒冷地や断熱性能を重視する住宅に適しています。

これらの断熱材を適切に選定し、壁、天井、床にしっかりと施工することで、住宅全体のUa値を大幅に向上させることができます。




6-2. 窓やドアの断熱対策




窓やドアからの熱損失は、住宅全体の約40%を占めると言われています。
たとえば、アルミサッシのU値は5.8と高く、熱が逃げやすい構造になっていますが、樹脂サッシに変えることでU値を1.3程度に抑えられます。

さらに、LOW-E(U値1.0〜1.5)を採用することで、窓からの熱損失を大幅に削減できます。
これにより、冷暖房の効率が向上し、住宅全体のUa値が低くなります。




6-3. 外壁や屋根の断熱施工


外壁や屋根の断熱施工も、家全体のUa値を左右する重要な要素です。
外壁に関しては、外断熱工法(U値0.4〜0.5)を採用することで、内部結露を防ぎ、断熱効果を最大限に引き出せます。

屋根には、断熱性能の高い断熱材を使用し、
さらに通気層を設けることで、夏場の熱を遮断し、快適な室温を保つことができます。






7. Ua値と健康への影響



Ua値が低い住宅は、室内の温度変動が少なく、湿度管理も容易になるため、健康的な住環境を提供します。
たとえば、Ua値が高い住宅では、温度差によるヒートショックのリスクが高く、特に高齢者の健康に悪影響を与えることがあります。
対して、Ua値が低い住宅では、室内温度が安定し、ヒートショックのリスクを軽減できます。

さらに、Ua値が低いことで結露を防ぎ、カビやダニの発生を抑えることができます。
これにより、アレルギーや呼吸器疾患のリスクを低減し、家族全員が安心して暮らせる住環境を提供します。






8. まとめ



従来の断熱性能は「脱炭素社会の実現」に向けて大きな役割を担ってきました。
数年で建材や設備、工法が進化し、「ZEH」という言葉が普及したこともその一つです。
そしてこれから迎える断熱新時代においては「全世代の健康寿命の延伸」「季節問わず得られるQOL向上」「従来を大きく上回る省エネ効果」を見据えたものとなっていくでしょう。

これからの家づくりを検討している方は、従来の省エネ性だけでなく、生涯に渡って実感できる「快適でエコな住まい」を実現していきましょう。